もしや円形脱毛症!?実はストレス以外の原因も
ふと鏡をのぞくとごっそり毛が抜けた部分がある。
枕に大量の抜け毛がある。
このまま毛が抜け続けてしまうのではないか。
突然やってきた脱毛の不安。見た目に大きく関わる問題のため、不安を感じる方も多くいます。
ストレスとの関わりが原因といわれますが、実際はどうなのでしょうか。
今回は円形脱毛症について説明していきます。
原因や予防法についても解説するので「もしかして自分は脱毛症ではないか」とお悩みの方に読んで頂きたいです。
なぜ円形脱毛症になるの?
円形脱毛症の原因
毛を生み出す細胞に対する、自己免疫疾患が原因と考えられています。
人体にとって有害な細菌やウィルスにのみ反応する自己免疫ですが、ときに機能が暴走して自分自身の体を攻撃します。これを自己免疫疾患といい、この免疫の暴走が毛根周辺で起きると毛根が破壊されて一気に毛が抜け落ちるのです。
同様の仕組みで発生するものに皮ふなどのアトピーがあります。
こちらは自己免疫疾患が皮膚で発生し起きるのですが、このアトピーと円形脱毛症の合併率は高く関係性があると考えられています。
円形脱毛症の症状とは?脱毛以外にあるの?
円状に生じる脱毛が特徴です。
毛髪をはじめとして、眉毛など発生箇所は全身に及びます。
また、毛根が免疫に攻撃されることで感嘆符毛(!状の毛)という毛が出現するのも特徴です。これは、根元に近づくにつれ毛が細くなった状態で毛根が免疫の攻撃を受けた影響で引き起こされます。
脱毛が起きていない部位の毛髪を軽く引っ張ると容易に抜ける、爪に点状のへこみが生じる状態も症状の一つです。
髪が薄いのも円形脱毛症なの?
薄毛にも数種類ありますが、薄毛の種類に「男性型脱毛症(AGA)」があります。円形脱毛症の原因が自己免疫であるのに対し、AGAの原因は男性ホルモンであるということが違いの一つです。
男性ホルモンは毛髪を細く短くする作用を持ち、この影響を受け続けることで徐々に薄毛が進行していきます。
もう一つの違いは、発症スピードの差です。
薄毛は男性長い年月をかけ徐々に発症しますが、円形脱毛症の発症はそれよりも早く、1-2日の短期間で急激に一部の毛が抜け落ちてしまうのです。
円形脱毛症の種類は?
脱毛の範囲と数で種類が分けられます。それぞれ解説していきましょう。
単発型
脱毛が一か所に発生するタイプで多くの方がこの単発型に分類されます。完治する確率も高いです。
多発型
脱毛が二か所以上発生するタイプです。単発型から多発型に進行する方もいらっしゃいます。
蛇行型
頭皮の生え際が帯状に脱毛していきます。治療期間が長期に及ぶ可能性があります。
全頭型
脱毛が頭部全体に及んだ状態。治りが非常に遅いなど治療が難しい場合も多いです。
汎発型
脱毛が毛髪以外の眉毛などに出現するケースがこちらの汎発(ばんぱつ)型です。全頭型と同様に治療が難しいことが多いです。
女性でも円形脱毛症になるの?
発症のしやすさに男女差や年齢はありません。男女差が存在するのは、円形脱毛症と近い症状が出る薄毛(AGA)であり、
男性:額から徐々に脱毛が拡大していく
女性:頭頂部を中心に毛が薄くなっていく
と、毛の抜け方に特徴的な差があります。
円形脱毛症の診断方法や治療方法
円形脱毛症の診断基準
脱毛が始まった時期や治療歴、ご家族で円形脱毛症になった方がいるかなどを丁寧に問診し、AGAや円形脱毛症以外の自己免疫疾患の可能性を除外していきます。
牽引試験という、髪を軽く引っ張り抜けるかどうかの検査も診断基準の一つです。
頭皮を拡大鏡で観察するダーモスコピーも診断には重要です。
- 感嘆符毛(!状の毛髪)
- 漸減毛(毛根に近づくにつれ細くなる状態)
- 黒点(根元でちぎれ黒い点のように見える毛髪)
の所見がみられるのも円形脱毛症に特徴的な所見としてみられます。
円形脱毛症の治療
主に用いられる治療法は次のとおりです。
ステロイド局所注射法
脱毛範囲が毛髪全体の25%未満の成人には、頭皮の表面にステロイド剤を4-6週間ごとに注射します。注射とステロイド剤の刺激で疼痛を伴うため、広範囲の脱毛治療に対しては別の治療法が選ばれます。
局所免疫療法
皮膚に薬品を塗りつけあえてかぶれを起こす治療法です。25%を超える範囲の脱毛症や、子どもには第一選択とされています。かぶれを起こす治療なので、かゆみを伴いますが我慢できる程度のかゆみは治療の範囲内です。
炎症を起こしてなぜ脱毛の治療になるのか、と思われたかもしれません。
詳しいメカニズムは解明されていませんが、ある研究ではかぶれを起こした部位に自己免疫が集中するため毛髪に対する免疫疾患が弱まるのではといわれています。
ステロイド外用療法
ステロイド外用療法は脱毛部にステロイド軟膏の塗布を行います。
これまでは効果の裏付けが十分でなくあまり推奨される立場ではない治療法でしたが、近年になりステロイド局所注射法や局所免疫療法と同じ推奨度の治療法になりました。
その他治療
行って良いとされていますが、推奨度は上記治療と比べやや低めとされています。
一部の薬品使用や漢方内服、心理療法
効果の検証が十分でなく、治療への利用は勧められていません
円形脱毛症の治療期間
アトピー疾患やその他自己免疫疾がなく、脱毛範囲が少数の場合は80%の方が1年以内に治癒します。
ただし、脱毛範囲が広範囲だったり1年以上続いたりする脱毛は回復する割合が低下するとされていますが専門家のあいだでも結論が出ていません。
医療機関で治療を実施した場合、個人差はありますが3〜4ヶ月頃から効果が出現し始めることが多いです。
受診の目安
次の症状が現れた方は早めの受診をおすすめします。
症状の出現から半年以内であれば、多くの治療法が実施可能です。皮膚科や脱毛専門クリニックへご相談ください。
円形脱毛症の予防方法や注意点
円形脱毛症の予防
確実に予防する方法はなく、一般的に「強いストレスを受けたから円形脱毛症になった」といわれる現象を説明する根拠も、はっきりしたものがありません。
ただし、円形脱毛症以外の脱毛症は生活の改善で一部予防できます。
- 脂質の多い食事を控える
- 十分な睡眠ととる
- 適切な回数のシャンプーを行う
- 毛髪を強く引っ張るヘアスタイルをさける
頭皮の病気や内臓疾患が原因で毛髪が抜けやすくなるケースもあります。
遠回りに思われるかもしれませんが、原因となる状態の解消が円形脱毛症の予防につながるのではないでしょうか。
円形脱毛症は遺伝するの?
円形脱毛症のなりやすさは遺伝します。
特に血縁が近いほど発症率が高く、親子の近さである1親等内に円形脱毛症がいる方の発症率はいない方と比べ10倍といわれています。
円形脱毛症を早く治す方法
治療期間は自己免疫疾患の程度によるため個人差が非常に大きいです。
発症から数か月で治ったかたから、10年以上治療に取り組まれている方もいます。
ストレスをはじめとする生活習慣と円形脱毛症の関係はまだ完全に解明されていませんが、適切なバランスの食事をする、睡眠を十分にとることは円形脱毛症に限らずすべての病気を予防する最適な方法といえるでしょう。
また、円形脱毛症の発症にはほかの自己免疫疾患が関わるケースもあり、そちらの治療を進めることが円形脱毛症の改善につながるとも考えられます。
まとめ
円形脱毛症が突然発症すると、驚かれたり不安を感じたりする方がほとんどではないでしょうか。
周囲に相談をしにくいため、自分ひとりで悩みを抱える方も多くいらっしゃいます。
誰にも悩みを相談できない生活はとても辛いものですが、治療で症状の早期回復が見込めるケースもあります。
「もしかして自分は円形脱毛症ではないか」と感じたならば、いちど専門の医療機関へご相談いただきたいです。
あなたの悩みを軽くするために、きっと医療が力になるでしょう。